○にんにくの薬効パワーはあの匂いから?
何とも強烈な匂いだが、これを食べると疲れもとれるし、病気にも効く。そればかりか、セックスの衰えにも効果がある。いったいこの“にんにく”なる植物は、いかなる成分を有しているのか?
多くの学者は、以上のような疑問を持って研究に取りかかりました。
薬学研究が発達していない時代には、にんにくはこの匂いがある故に“効く”と、単純に考えられていました。そういう意味でミステリアス。摩訶不思議な食べ物が『にんにく』と考えられていたわけです。
にんにくの研究は、ドイツの化学者ゼムラーによって、今から約百年前の1892年に本格的に始まりました。研究の第一段階は、にんにく効果の主因と考えられていた匂いの解明が主眼で、ゼムラーは「ジアリルジサファイド」を発見。同じくドイツの学者ルンドクウィストは「アリイン」を発見しました。やがてアメリカのカバリット博士などが研究に参加し、1944年に「アリシン」という物質を抽出することに成功しました。実はこの物質こそ、にんにくの抗菌性を証明するものでした。
○にんにくから生まれたビタミン剤もある
ヨーロッパでペストが猛威をふるった時、にんにくを多食した人には罹患者が少なく、にんにくは神秘的な魔除けの食べ物と考えられていたのですが、「アリシン」の発見で、にんにくには、もともと抗菌作用があることが解り、人びとは納得しました。
日本でも1950年代からにんにくの薬理研究が盛んになり、理研科学の創始者小湊潔博士がスコルジニンという薬効成分を発表したり、京都大学の藤原元典博士がビタミン研究の権威として知られる松川泰三博士との共同研究で「アリチアミン」の結晶を抽出して“アリナミン”と呼ばれるビタミン剤のヒット商品をつくり出しました。
1970年頃から、制癌に有効と言われるゲルマニウムが多量に含まれていることが指摘されています。
他に、70年代に入りますと、インドのジェイン博士他多くの学者が、にんにく成分の動脈硬化予防、血小板抑制作用などについても、貴重な研究成果を発表しております。
■アリイン
にんにくに含まれる無臭の結晶性成分。にんにくをすりおろしたり、刻んだりするとアリナーゼの働きによって、強い臭気を出します。 |
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■アリナーゼ
にんにくに含まれる酵素でにんにくの細胞が破壊され空気に触れると酵素が働いてアリシン、ジアリルサルファイドの匂い成分に変化します。加熱すると、その働きが弱まります。 |
■アリシン
アリインがアリナーゼの作用で分解してできるイオウ性化合物。化学反応によってジアリルトリスフィドと呼ばれるにおい成分に変化します。抗菌作用、血小板抑制作用があり、ビタミンB1と結びついてアリチアミンという成分に変化し、ビタミンの吸収と効果を促進します。 |
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■アホエン
強い抗血小板作用、抗菌作用を持つ成分で、スペインの学者によって抽出されて物質。アリシンを加熱すると生じる物質。アホエンはスペイン語のAJO(アホ)から名づけられています。 |
■アリチアミン
にんにくのアリシンとビタミンB1が結合した物質。ビタミン剤「アリナミン」は、このアリチアミンから生まれました。 |
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■スコルジニン
にんにく中の何らかの成分と、糖と結合してできた無臭の物質。にんにく成分にして無臭であり、かつ体力増強や抗癌作用があるので注目されています。 |
■ゲルマニウム
にんにくに大量に含有されるミネラルの一種。酵素を体のすみずみに供給する働きがあるので、疲労回復や強壮に効果があります。また制癌作用にも威力を発揮することが実証されています。 |
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■メチルアリルトリスフィド
血小板抑制作用があり、血液を固まりにくくし、脳梗塞や心筋梗塞などの血栓症を防止する働きがあります。 |